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なぜ今、オフィスのウェルビーイングが注目されているのか?背景と導入のメリットを解説

なぜ今、オフィスのウェルビーイングが注目されているのか?背景と導入のメリットを解説

近年、企業経営において注目されているキーワードのひとつが「ウェルビーイング(Well-being)」です。 従業員一人ひとりの幸福感や心身の健康を重視し、それを経営やオフィス環境の中にどう組み込むか――。 このテーマは単なる“福利厚生の充実”ではなく、企業価値の根幹に関わる重要な視点として捉えられています。 本記事では、「オフィスにおけるウェルビーイング」をテーマに、その基本概念から、導入のメリット、実践ポイントまでを詳しく解説します。

【ウェルビーイングとは?】

 

ウェルビーイング(Well-being)とは、直訳すると「良好な状態」「幸福で満たされた状態」を意味します。

世界保健機関(WHO)は「肉体的・精神的・社会的に良好な状態」と定義しており、単に“健康である”ことを超えた広い概念です。

 

近年では、企業経営や働き方の領域でも重視され、次の3つの要素が特に注目されています。

 

身体的ウェルビーイング:健康的な職場環境、快適な温湿度・照明・空気質など
精神的ウェルビーイング:ストレスを軽減し、安心して働ける心理的安全性
社会的ウェルビーイング:人間関係・チーム連携・企業文化による充足感

 

オフィスデザインや制度設計にこれらを取り入れることで、社員の幸福度と生産性の両立を目指すのが「ウェルビーイング経営」です。

 

【オフィスにウェルビーイングが求められる背景】

従来のオフィスは、業務効率やコスト削減を最優先に設計されることが多く、「快適さ」「心理的満足感」は二の次とされてきました。

しかし、働き方の多様化とリモートワークの普及により、出社する理由が変わりつつあります。

いま、オフィスには「働く場所」以上の価値が求められています。

 

・社員同士が交流し、創造的なアイデアを生み出す場
・モチベーションを高め、企業文化を感じる場
・心身ともに健やかに働ける環境

 

こうした価値を高めるうえで、ウェルビーイングの考え方が欠かせません。

実際、GoogleやMicrosoftなどのグローバル企業も、オフィス環境と社員幸福度の相関に注目し、ウェルビーイング設計を積極的に採用しています。

 

【オフィスにウェルビーイングを取り入れるメリット】

 

①生産性の向上
快適な温度・照明・空気環境は、集中力や判断力に大きく影響します。
また、自然光を取り入れたレイアウトや、休憩しやすい空間設計により、ストレスが軽減され生産性が向上することが多くの研究で報告されています。

 

②離職率の低下・採用力の向上
「働きやすいオフィス」「社員を大切にしている会社」という印象は、求職者にとって大きな魅力です。
ウェルビーイングを重視する企業は、定着率や採用力の向上にもつながります。

 

③創造性・コミュニケーションの促進
リラックスできる空間や、偶発的な出会いを生むカフェスペースなどは、チーム間の壁をなくし、新しいアイデアが生まれる環境を作ります。

 

【オフィスウェルビーイングの実践ポイント】

 

①自然との調和を意識した空間づくり
人は自然と触れることでストレスを軽減できるとされています。
観葉植物を配置する「バイオフィリックデザイン」や、木材・自然光を取り入れた内装は、視覚的な安心感と心地よさを与えます。

 

②照明と空調の最適化
・昼光に近い照明で体内リズムを整える
・個別調整が可能な空調システムを導入する

こうした調整により、集中力の維持や疲労軽減が期待できます。

 

③多様な働き方に対応したスペース設計
集中作業、雑談、オンライン会議など、目的別にゾーニングすることで、社員が働き方を自ら選べるオフィスになります。
特に「ABW(Activity Based Working)」の考え方は、ウェルビーイングとの親和性が高い手法です。

 

④心理的安全性を高める空間
固定席や壁で仕切られた空間だけでなく、開放的な打ち合わせエリアや共有スペースを設けることで、コミュニケーションが自然に生まれます。
これはメンタル面の安定にも寄与します。

 

⑤休息・リフレッシュエリアの設置
カフェコーナー、仮眠スペース、瞑想ルームなどを設けることで、短時間でもリセットできる環境を整えます。
結果的に、集中と休息のバランスが取れた働き方を実現できます。

 

【企業がウェルビーイングを推進するためのステップ】

 

①現状把握:社員アンケートや環境測定で課題を可視化
ウェルビーイング施策を始めるうえで欠かせないのが「現状の見える化」です。
社員アンケートやヒアリングを行い、働きにくさやストレスの要因を把握しましょう。
加えて温度・湿度・騒音などの環境データを測定すると、主観だけでなく客観的な課題も明確になります。
この段階での丁寧な分析が、後の改善策を的確にします。

 

②方針設定:企業理念・働き方戦略と結びつける
次に、自社の理念や働き方戦略とウェルビーイングの方向性を結びつけます。
「チームワークを重視する」「集中できる環境を整える」など、目指す働き方によって空間設計は変わります。
企業としてどんな環境を“理想”とするのかを明文化し、オフィスづくりの軸を定めることが大切です。

 

③空間設計:専門業者と連携し、デザインと機能の両立を図る
快適なオフィスは、見た目のデザインと機能性のバランスが重要です。
自然光の取り込み、静音性の確保、リラックススペースの配置などを考慮し、社員が安心して働ける環境を設計しましょう。
専門業者と協力することで、デザイン性とコスト・施工性を両立できます。

 

④評価と改善:導入後も継続的にモニタリングを実施
施策を導入したら終わりではなく、定期的なモニタリングが欠かせません。
社員アンケートや利用状況のデータをもとに、環境の効果を評価します。
働き方や組織の変化に合わせて柔軟に改善を続けることで、ウェルビーイングを持続的に高められます。

 

【まとめ|ウェルビーイングは「人」と「企業」を強くする投資】

オフィスにウェルビーイングの考え方を取り入れることは、

単に「快適な職場をつくる」だけでなく、社員の幸福が企業の成果へ直結するという考え方に基づいています。

 

快適な空間が生産性を高め、良好な人間関係が創造性を生み、

それらが企業全体のブランド力を押し上げていく――。

 

ウェルビーイングの実現は、いまや経営戦略の一部と言えるでしょう。

自社の理念や働き方に合わせて、少しずつ取り入れていくことが、これからのオフィスづくりの鍵になります。