近年、リモートワークやテレワークの普及が進む中、企業のオフィス運営の在り方が見直されており、その中でも「オフィス分散」という選択肢が注目を集めています。 1箇所に業務を集中させるのではなく、複数の拠点に分散することで、柔軟な働き方を実現しつつリスクを最小化するアプローチが可能になるため、実は多くの企業で実行されています。 この記事では、オフィス分散に疑問をお持ちの方やお考えの方に向け、オフィス分散の目的やメリット、課題、そして具体的な進め方について詳しく解説します。
オフィス分散とは、企業が業務拠点を一箇所に継続する従来の運営方法から脱却し、複数の拠点に分散させる働き方のモデルです。
例えば・・・
・地方都市や郊外に新たなオフィスを設置。
・コワーキングスペースやサテライトオフィスを利用。
・リモートワークを推進し、自宅も業務の一拠点とする。
上記の取り組みにより、企業はリスク管理や業務効率の向上に加え、働き方の柔軟性を高めることができます。
オフィス分散が注目される背景には、企業が抱えるさまざまな課題があります。
1.リスク分散
自然災害や感染症が拡大し、交通に支障が出るなどの非常事態が発生した際、1箇所のオフィスに依存していると業務が停止するリスクがあります。
反対に複数拠点を持つことで、影響を極力抑え、業務の継続性を確保することができます。
2.従業員の働きやすさ向上
通勤時間帯に混雑しやすい都市部のオフィスでは、従業員のストレスが高まりがちです。
また、外回りやある程度の距離を移動する従業員が多い場合は、1箇所に大きなオフィスを構えることが非効率的になる可能性がありますが、分散拠点を置くことで従業員が自宅や営業先近くのオフィスやサテライトオフィスを利用でき、個々の負担を軽減することができます。
3.多様な人材の確保
地方に拠点を置くことで、地元の優秀な人材や、育児や介護と仕事を両立できる人材を採用し易くなります。
都心部には企業の拠点が多く立ち並ぶため、人材の確保が激戦化しており、優秀な人材の確保に多くのコストをかける必要があるでしょう。
しかし、地方に拠点を新たに設置することで、柔軟な働き方を求めたいという優秀な人材にとっても魅力的な選択肢となり、人材の確保が安定します。
オフィス分散には多くのメリットがあり、中でも代表的な3つのメリットを紹介します。
1.業務の継続性の向上
自然災害やインフラ障害などが発生しても、他の拠点で業務を継続できる体制を整えられるため、企業活動の停止を防ぐことができます。
一度、企業活動が停止してしまうと、サービスを提供している取引先への影響により、顧客離れに繋がってしまいます。
拠点同士でバックアップしあえる環境を構築することで、企業活動停止のリスクを回避できるのは大きなメリットと言えるでしょう。
2.働き方の柔軟性向上
リモートワークやサテライトオフィスの活用により、従業員は自分にとって最適な環境で働くことができます。
これにより、従業員満足度や生産性が向上します。
3.コスト削減の可能性
大都市で大きな拠点を1箇所構えるよりも郊外や地方のオフィスを活用することで、賃料などの運営コストの削減が出来る可能性があります。
以上で紹介した通り、利点の多いオフィス分散ですが、課題もあります。
次にオフィスを分散することで多くみられる課題とその対処法について解説していきましょう。
1.コミュニケーションの課題
まず、最も多く挙げられる課題として、物理的に離れた拠点間でのコミュニケーション不足があります。
特に部門間の交流が少ない業務に携わっている場合は、コミュニケーション不足が深刻化しやすいのが特徴です。
対処法:オンラインツールやクラウドシステムを活用し、効率的なコミュニケーションを図りましょう。定期的な全社ミーティングや部門間の交流も重要です。
2.管理コストの増加
複数拠点を管理することで、コストや労力が増大します。
拠点を増やすごとに管理、維持費が倍増する可能性があるため、拠点を分散した場合と、分散しなかった場合の比較が重要になります。
対処法:ITインフラの整備や、外部サービスを利用して運営の効率化を図りましょう。必要に応じて拠点間の役割を明確に変化させ、重複を避けます。
3.企業文化の一体感の低下
拠点ごとに従業員が分散すると、企業としての一体感が薄れるリスクがあります。
上記で取り上げたコミュニケーション不足に続き、拠点ごとの役割を明確に変化させ過ぎてしまうと、同じ企業にもかかわらず全く異なる企業文化が独立してしまう可能性があります。
対処法:共通のビジョンや価値観を明確にし、定期的な社内イベントや全社でのオンライン交流会を実施しましょう。
先述の課題をクリアにしていくためにも、オフィス分散には計画的なステップが重要です。
オフィス分散を検討する際は以下の手順を参考にしてください。
①現状分析
まず、なぜオフィスを分散するのかを明確にしましょう。
目的が定まらないまま分散を進めると、コストが増大したり、効果が薄れたりする可能性があります。
現在の業務フローや従業員の働き方を分析し、分散の必要性と目的を明確化することが大切です。
②拠点の検討、決定
利便性やコスト、人材確保のしやすさを考慮して、新たな拠点の候補を選定しましょう。
③内装やインフラの整備
会議室等の必要な内装工事、什器の準備を完了させます。
また、ITシステムやセキュリティ環境を整え、分散オフィス間での連携が取れるようにすると良いでしょう。
④試験運用
小規模な試験運用を行い、課題や改善点を洗い出します。
現場の声によく耳を傾け、スムーズな運用が実現できるよう具体的な運用方法を計画することで、期待と結果のギャップが縮まります。
⑤本格導入
分散オフィスの運用を本格的に開始し、定期的な評価と改善を続けます。
分散先のオフィスを選ぶ際には、以下の点に注意して選定することが重要です。
1.アクセスの利便性
従業員が通勤しやすい場所を選ぶことで、移動時間を短縮し、働きやすい環境を整えることができます。
公共交通機関や車でのアクセスが良い場所を選定しましょう。
2.周辺環境とインフラ
オフィス周辺の環境も重要です。
カフェや飲食店、コンビニ、銀行などのアクセス施設が充実していると、従業員の利便性が向上します。
また、業種によっては駐車場の有無も確認しましょう。
3.コストの最適化
拠点を分散させることで、運営コストが増大する可能性があります。
そのため、賃料や運営費が適切な範囲であることを確認し、長期的なコストを見据えましょう。
4.将来的な拡張性
事業の成長や組織の拡大を見据え、オフィスの規模や利用可能スペースに柔軟性があるかを確認します。
将来的な変更に対応できる契約条件も重要です。
5. ITおよびセキュリティ対応
分散先オフィスでセキュリティや通信環境が整備されているかどうかチェックします。
リモートワークやクラウドベースの業務を考慮した環境は、スムーズな業務運営に欠かせません。
オフィスの分散は、働き方の柔軟性を高めるとともに、企業のリスク管理やコストを最適化するための重要な選択肢ですが、一方でコミュニケーションの難しさや管理コストの増加などの課題もあります。
正しい分散先オフィスを選び、リモートツールや定期的な交流を活用することで、企業全体としての一体感を意識することで効率的な業務が実現できるため、自社のニーズに合わせて計画し、最適な方法を選択しましょう。