近年、業務の効率化や環境保護の観点から、オフィスのペーパーレス化が注目されています。 この記事では、ペーパーレス化の導入を検討されている方に向けて具体的なメリット・デメリット、導入の流れや注意点までを詳しく解説します。
オフィスのペーパーレス化とは、紙の書類を電子データに置き換えることで、業務における紙の使用量を削減する取り組みを指します。
この取り組みは単なる紙の削減にとどまらず、デジタル技術を活用して業務プロセスを効率化し、組織全体の生産性向上を目指すものです。
背景として大きくかかわってくるのが、「電子帳簿保存法」の改正です。
この法律は、企業が税務関連書類を電子的に保存する際の条件を定めたもので、2022年1月の改正により、電子データで受領した書類は紙に出力せず、電子保存をすることが義務付けられました。
またこれに伴い、スキャナ保存制度も緩和され、紙の書類をスキャンして電子データとして保存することがより簡便になりました。
これらの法改正は、ペーパーレス化を後押しする重要なポイントとなっています。
※電子帳簿保存法については下記コラムも併せてご参照ください。
ペーパーレス化にはオフィス運営において多くのメリットがあり、その中でも主なものをご紹介します。
・コスト削減
紙、インク、プリンター、キャビネットなどのコストを削減できます。
また、書類管理の手間が減ることで人件費の削減にもつながります。
・業務効率の向上
デジタル化されたデータは検索や共有が簡単です。
データをデジタル化することで、今まで時間のかかっていた書類を探す時間が短縮され、業務効率も格段に上がります。
・環境負荷の軽減
紙の使用量を削減することで、森林資源の保護やCO2排出量の削減に貢献できます。
・災害リスクの軽減
紙の書類は水害や家事などが起きた際の水没、焼失リスクがありますが、クラウド保存を利用すれば安全性が大幅に向上します。
・リモートワークへの対応
デジタル化されたデータは場所を問わずアクセスできるため、リモートワークを円滑に進めるための基盤となります。
書類をファイリングしたり探したりするために出社する必要がなくなります。
一方で、ペーパーレス化には以下のようなデメリットもあります。
・初期コストの発生
システム導入や必要な機器の購入に一定のコストがかかります。また、従業員への周知研修も必要です。
・セキュリティリスク
デジタルデータの扱いには、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクが伴います。適切なセキュリティ対策が不可欠です。
・運用の難しさ
紙の書類に慣れた従業員がいる場合、運用の切り替えに時間がかかることがあります。
・システムトラブルの影響
データがクラウドや電子機器に依存するため、システム障害が業務に大きな影響を与える可能性があります。
オフィスのペーパーレス化のメリット・デメリットを理解して頂けたところで、次項では実際にペーパーレス化を進める流れについてご紹介します。
実際にペーパーレス化を進める際の流れをご紹介します。
1.現状分析
現在の紙の使用量や書類の管理方法、管理状況を把握し、ペーパーレス化による改善ポイントを明確化する必要があります。
全てのペーパレス化、若しくは一部のみなど、まずは現状の分析をしなければ、自分たちにあった運用方法を確定することができません。
2.目標設定
削減したい紙の量や、改善したい業務プロセスを具体的に設定します。
3.導入計画の策定
ペーパーレス化に必要なシステムやツールを選定し、導入スケジュールを立てます。
例えば、文書管理システムやスキャナなどが挙げられます。
4.従業員への周知・研修
導入の企画を策定した後は、新しい仕組みに慣れてもらうため、従業員への説明会やシステムの研修を実施しましょう。
5.システムの導入と運用開始
システムを導入し、運用を開始したら段階的にペーパーレス化を進め、問題があれば随時改善を行いましょう。
・法律への準拠
電子帳簿保存法や個人情報保護法など、関連法規を十分に理解し、遵守する必要があります。
◆ 電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は、税務関連の書類を電子データで保存する際の要件を定めた法律です。
この法律では、以下のような点がポイントとなります。
◇電子取引のデータ保存義務
2022年1月の改正により、電子データで受領した書類(請求書、領収書など)は原則として紙に出力せず、電子データのまま保存することが義務化されました。
◇スキャナ保存制度の要件緩和
紙で受け取った書類をスキャンして電子保存する場合、タイムスタンプの付与や適正事務処理要件を満たす必要がありますが、この運用が簡素化されています。
◇保存要件
保存する電子データには以下を満たす必要があります。
真実性の確保(改ざん防止措置)
見読性の確保(いつでも閲覧可能な状態で保存)
検索性の確保(検索条件を満たす保存方式)
◆個人情報保護法
個人情報保護法は、個人を特定できる情報の取り扱いに関するルールを定めた法律です。
ペーパーレス化により電子データで個人情報を管理する場合、次のような対応が求められます。
◇安全管理措置の実施
個人情報を取り扱うシステムに対して、アクセス制限や暗号化、定期的なバックアップなどの適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。
◇外部委託先の監督
クラウドサービスなど外部にデータ管理を委託する場合、契約内容や運用実態を確認し、個人情報が適切に管理されているかを監督する義務があります。
◇データの目的外利用禁止
収集した個人情報は、事前に示した利用目的の範囲内でのみ利用する必要があります。
・バックアップの確保
データ消失のリスクに備え、クラウドや外部ストレージなどに定期的にバックアップをとることが重要です。
・従業員の理解を得る
ペーパーレス化のメリットをわかりやすく伝え、導入することでどのような効果が得られるのかを周知しましょう。
そのうえで積極的な協力を促します。
・小規模から始める
最初から全面的に切り替えるのではなく、試験的に一部の業務で導入し、問題点を洗い出すことがおすすめです。
日本では、政府のデジタル化推進や電子帳簿保存法の改正を背景に、ペーパーレス化の導入が加速しています。
特に、大手企業を中心に文書管理システムの導入やクラウドサービスの活用が広がっています。
一方で、中小企業ではコストやリソースの問題から導入が進んでいないケースも多く見られるのが現状です。
オフィスのペーパーレス化は、業務効率の向上やコスト削減、環境保護など多くのメリットをもたらします。
しかし、導入には初期コストや運用の難しさといった課題もあるため、慎重な計画と実行が求められます。
法律への対応や従業員の意識改革も成功の鍵です。
今後のビジネス環境を見据え、ペーパーレス化を効果的に進めることで、より柔軟で効率的な業務運営が可能になるでしょう。